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サブリースを踏まえた一括借上げ賃料の減額請求について

 昨今、サブリースを踏まえた一括借上げ賃料の唐突な減額請求を受け、悩み苦しまれているサブリースオーナーが数多くおられます。建物建設が伴うサブリースを踏まえた当該賃料は、賃借人(サブリース業者)との共同事業に協力し、賃貸人(地主)がその建設に関し多額の借財を抱えるといった特殊な事情(諸般の事情)を踏まえることにより定まるものであります。

 

 この場合、賃借人(サブリース業者)が一括借上げ賃料を支払い続けることができる限り問題は生じません。しかし、ひとたび賃借人(サブリース業者)から一括借上げ賃料の減額交渉を求められると、賃貸人(地主)は事業収支に基づく資金の返済計画が狂わされ、自己破産の危機に追い込まれる可能性がでてきます。

 

 この点、サブリースを踏まえた一括借上げ賃料の減額請求に関する最高裁の判断(平成15年10月21日、平成15年10月23日、平成17年3月10日)は、借地借家法32条1項に基づき、賃借人(サブリース業者)からの賃料減額請求権は認めるとしながらも、相当賃料額を踏まえたものとする見解に立っています。

 

 この相当賃料額とは、契約締結時において当事者が賃料額決定の要素とした事情(賃料保証に関する事情・建物建設に伴う借入金に関する事情)を総合的に勘案することにより求められる賃料であります。

 

 現実問題としてサブリースを踏まえ合意される一括借上げ賃料は、上記のような特殊な事情(諸般の事情)を含んでいることから減額ができない賃料とも言えます。

 

 この点につき、相当賃料額の評価について従来の不動産鑑定評価基準では、契約当初における賃貸人(地主)が建物建設に際して多額の借財を抱えるといった借入金に関する事情は一切考慮されませんでした。

 

 その結果、司法の場において当該事情(諸般の事情)が勘案されていない不動産鑑定評価書は否認され続けるという状況にありました。

 

 平成26年5月、これら由々しき状況を打開すべく不動産鑑定評価基準の改正が行われるに至っております。

 

 しかしながら、上記における改正不動産鑑定評価基準では、諸般の事情の反映について概念が示されたに過ぎないことから、その解釈が評価人に委ねられることになります

 

 この点につき、司法に対して評価における諸般の事情の勘案を追認して貰うため、以下における3つの要件を具備する必要があると考えます。

 

 一括借上げ賃料を評価するための鑑定評価手法の適用にあたり、①サブリースを踏まえた契約締結時における諸般の事情の反映が的確になされていること、②諸般の事情に関する数値化についての根拠が明確であること、③各手法の適用に関して同一の乗数がすべてに採用されていること、これら3要件が具備されれば係争の場での司法の信頼獲得につながることになります。

 

 以下にて、これら要件につき具体例を当てはめながらその検証を行いたいと思いますが、私見として契約当初のサブリース業者の事業利益が鍵になると考えております。

 

 上記①について、諸般の事情とは契約締結時における当事者間の賃料額決定の要素とした事情であることから、まず当該時点において当事者がどのようなやり取りを行い、一括借上げ賃料を決定したのかを検証する必要があります。

 

 サブリースオーナーが一括借上げ賃料を決定するためには、まず敷地上における収益用不動産の建設を想定し、それを踏まえた建築費相当額を把握し、これに関する借入につき銀行を介して行うか、サブリース業者(建物賃借人)を介して行うかを踏まえた上で、当該賃料はこれら借入金等を勘案した逆算の論理により定められることになります。

 

 これに対してサブリース業者は、土地所有者(地主)に対する土地の有効活用の提案の見返りとし、敷地上に建設された収益用不動産の賃貸運営代行による賃料(転貸賃料)と建物所有者(建物賃貸人・地主)への賃料(一括借上げ賃料)との差額部分を事業利益として取得することになります。

 

 このように、転貸賃料−一括借上げ賃料=サブリース業者の事業利益は、契約締結時における諸般の事情となる建物建設に伴う借入金を考慮した一括借上げ賃料を踏まえ最終的に得られる利益であることから、表裏一体の関係にある部分とも言えます。

 

 つまり、当該利益は、当事者間における諸般の事情を反映した利益ともいえ、これを評価の過程で考慮するということは、評価上での諸般の事情の勘案にもつながるものであります。

 

 上記②について、これら利益を踏まえた借上げ賃料利ザヤ率は、上記における転貸賃料に対して10%〜15%程度で決められることが多く、仮にこれ以上の利ザヤを求めるとオーナーサイドの借入金返済ほかの支払いが困難となりビジネスモデルが崩壊します。

 

 この点、サブリース業者(建物賃借人)は、当該利ザヤ率を1%でも多くとりたいため、建物所有者(建物賃貸人・地主)に様々な提案を行います。

 

 具体的には、当該利ザヤ率について11%を13%に上昇させるべく(一括借上げ賃料率は89%から87%へ低減)、その代わりに借上げ賃料の固定期間を6年間設けるなどとした提案を持ちかけることが挙げられます。

 

 つまり、一括借上げ賃料に係る利ザヤ部分は、上記の通り契約締結時における賃料額決定の要素となる諸般の事情を踏まえた借上げ賃料と相関関係にある部分であり、逆の側面からも諸般の事情を説明することができます。

 

 したがって、諸般の事情の数値化(諸般の事情に係る修正率)については、一括借上げ賃料率と表裏一体の関係にある借上げ賃料利ザヤ率が何%をもって設定されているのかを踏まえ、判断すべきであると考えます。

 

 これに関して借上げ賃料利ザヤ率が15%であれば、一括借上げ賃料率は85%となり、同様に借上げ賃料ザヤ率が10%であれば、一括借上げ賃料率は90%となることから、仮にサブリース業者からの賃料減額請求があった場合、前者の方が契約当初時点における賃料の取り目が少ない分、より手厚い保護が必要となることから考慮すべき諸般の事情に係る修正率は15%となり、後者の方は当該保護がより薄くなることから考慮すべき諸般の事情に係る修正率は10%になるといった理屈であります。

 

 上記③について、借上げ賃料利ザヤ率(諸般の事情に係る修正率)を踏まえ、各手法の適用にあたり以下の通り当てはめを行うことにより一括借上げ賃料(相当賃料額)を求めることができます。

 

 なお、一括借上げ賃料は、そもそも色分けのない必要諸経費込みとなる諸般の事情を勘案した賃料であることから、各手法適用によって求められる当該経費込みとなる試算賃料に、上記における諸般の事情に係る修正率を乗ずることにより、相当賃料額を求めることになります。

 

(1)差額配分法 =( 現行賃料 ± 貸主帰属の賃料差額(新規賃料 − 現行賃料))×(1+ 借上げ賃料利ザヤ率( 諸般の事情に係る修正率:10%〜15% ))

 

(2)利回り法 =( 価格時点における基礎価格 × 現行賃料を求めた時点における継続賃料利回り + 価格時点における必要諸経費等 )×(1+ 借上げ賃料利ザヤ率( 諸般の事情に係る修正率:10%〜15% ))

 

(3)スライド法 =( 現行賃料を求めた時点における純賃料 × 価格時点に修正するための変動率 + 価格時点における必要諸経費等 )×(1+ 借上げ賃料利ザヤ率( 諸般の事情に係る修正率:10%〜15% ))

 

 以上、サブリース業者の事業利益を踏まえることにより、上記における3要件をすべて論理的に説明することができ、かつ最高裁が求める諸般の事情を勘案した相当賃料額の判定が具現化されることになります。

 

 また、上記三手法において借上げ賃料を求める際の一括借上げ賃料率は、直近の賃料減額改定時における賃料減額率が参考となり、具体的には市場賃料(転貸賃料)を100とした場合に8%の減額があれば、新たな実入り収入となる借上げ賃料が92となり、市場賃料(転貸賃料)に対する新たな一括借上げ賃料率が92%となることから、当該利率を踏まえた補正を施すことにより各試算賃料を求めることになります。

 

 但し、直近の賃料減額率がサブリースオーナーの借入金の返済計画を狂わせ、金融機関に対しそのリスケを願い出ねばならないほどの賃料減額が求められていた場合には、当然その旨を勘案することにより当該率を判断することになります。

 

 総じて、前段で掲げた最高裁のサブリース判決では、借入金等を踏まえ積上げ算で定められた一括借上げ賃料は、原則下げられない賃料であるとしながらも、借地借家法32条1項が適用されるサブリースを踏まえた一括借上げ契約であることを勘案し、近傍同種の建物の賃料相場との関係、固定資産税等の増減及び土地建物価格の変動などを考慮するものと説示しています。

 

 したがって、上記三手法の適用に関しては、上記の通り賃貸借契約である事情を踏まえつつ、建物建設に伴う借入金等を踏まえた諸般の事情を勘案することにより、相当賃料額を判定することになります。

 

 今現在、建物建設が伴うサブリースを踏まえた一括借上げ物件を所有されているオーナー様で、サブリース業者からの唐突な賃料減額請求の申し出を受けお悩みであれば、お気軽にお声がけください。

 

 また、サブリースを踏まえた一括借上げ賃料と契約解除との関係性についても併せてお読み頂ければと思います。

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