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借家権(立退料)の評価について

 借家権とは、借地借家法(廃止前の借家法を含む。)が適用される建物の賃借権をいいます。借家権の経済価値が認められる場合を例示すると、以下のような場合が挙げられます。

 

 ・賃貸人から建物の明渡しの要求を受けた際、借家人が不随意の立退きに伴い事実上喪失する経済的利益の補償を受ける場合

 

 ・公共用地の取得に伴い損失補償を受ける場合

 

 借家権は、借地借家法により保護されている借家人の社会的、経済的乃至は法的利益の経済価値を総称するものといわれるように利益を生み出す元本というほどのものが明確な形で存在しておらず、喪失する利益の補償、すなわち補償原理の観点から借家権の経済価値を把握する場合がほとんどであります。

 

 不動産鑑定評価基準においては、①借家権の取引慣行がある場合における鑑定評価、②不随意の立退きがある場合における鑑定評価の二つの場合分けがなされています。

 

 ①借家権の取引慣行がある場合における鑑定評価は、銀座等に存する商業店舗の鑑定評価を想定したものであり、借家権の取引事例を収集し、これを比較対照することにより借家権価格を求めるものでありますが、借家権は当事者間における債権取引であり、借家権の取引事例を収集することが現実的に難しいことから、その手法適用は困難なものであります。

 

 次に、自用の建物及びその敷地の価格から貸家及びその敷地の価格を控除し、所要の調整を行うことにより借家権価格を求める手法を適用します。これは下駄を履いた人間を想定すれば、下駄を履いた人間が自用の建物及びその敷地の価格で、人間が貸家及びその敷地の価格、下駄が借家権価格というイメージで、下駄部分の価格(借家権価格)を求めるという手法であります。

 

 さらに、借家権割合を適用する手法があり、これは国税庁ホームページでもその評価手法が示されていますが、建物賃借権が建物利用のみならず間接的に敷地利用(借地利用)をもしていると解釈し、敷地部分に借地権割合を乗じて得た価格に建物価格を加算し、それに借家権割合を乗ずることにより借家権価格を試算します。

 

 ②不随意の立退きがある場合における鑑定評価は、立退き補償を前提とした借家権評価であることから、立退きに伴う現在借りている物件の移転費用の観点から、移転に伴い新たに生ずるフロアー賃料から現行のフロアー賃料を控除して得た差額に対する一定の補償期間に相当する額に、移転に伴い新たに生ずる賃料の前払い的性格を有する一時金の額を加えた価格、並びに自用の建物及びその敷地の価格から貸家及びその敷地の価格を控除し、所要の調整を行って得た価格を関連づけることにより借家権価格を試算します。

 

 この点に関し、不動産鑑定を以って求められる借家権価格は、以上を踏まえたものとなりますが、現実問題として借家権の評価が立退きを前提とする補償的な意味合いが強いことから、当該価格に補償額が十分に反映されているのかが、問題となります。

 

 しかしながら、補償額の算定は、不動産鑑定の範疇外となることから、用対連基準における借家人に対する通損補償及び公共用地の取得に伴う損失補償基準を参考としこれを求めることになります。

 

 具体的には、借家人に対する補償としては、(1)造作工事に関する補償、(2)設備等更新に係る補償、(3)営業補償、(4)移転補償が挙げられます。

 

 (1)造作工事に関する補償・・・・移転先において居酒屋又は高級ラウンジ仕様とするための内装工事費に関する補償となります。

 

 (2)設備等更新に係る補償・・・・内装のみならず、新装開店に見合う新たな設備更新を求めるための補償であり、例えばカラオケ設備、家具、ソファセット及び絵画などの家具調度品を新品に入れ替えることなどが挙げられます。なお、当該補償は同等な新品交換であることが求められますが、その相当額を把握するには青色申告決算書における減価償却費一覧の取得価額が参考となります。

 

 (3)営業補償・・・・店舗移転に伴い営業が休止することでの補償であり、以下の通り4つの損失補償を掲げることができます。

 

 ①休業補償・・・・営業が休止することでの期間中の収益減に対する補償となります。なお、これを把握するには、損益計算書の営業損益額を踏まえることになります。

 

 ②固定的経費補償・・・・営業が休止しても継続して生ずる固定的経費に対する補償となり、具体的には休業中の従業員の給与及び健康保険等の福利厚生費、移転の対象とならない建物及び設備機器等の減価償却費、固定資産税、都市計画税、自動車税等の租税公課などの休業期間に対する補償となります。なお、これらを把握するには、損益計算書の費用額を踏まえることになります。

 

 ③得意先喪失補償・・・・店舗移転に伴い一時的に営業休止となり、移転先店舗での売上げ減少が余儀なくされることから、常連客を一時的に失いこれを回復するまでのタイムラグ期間に対する損失補償となります。なお、これを把握するには、損益計算書の営業損益額を踏まえることになります。

 

 ④原材料などの廃棄処分補償・・・・例えば、高級な肉を扱う店舗であれば鮮度が落ちることで廃棄処分せねばならないことに対する補償となります。

 

 (4)移転補償とは、店舗移転に伴い生ずる経費負担に対する補償であり、以下の通り4つの費用補償を掲げることができます。

 

 ①新規店舗への移転費用・・・・いわゆる引越代であり、人件費と車両運搬費を踏まえた費用となります。

 

 ②新規店舗の契約に伴う仲介手数料・・・・新規賃料の1ヶ月分相当を計上します。

 

 ③新規店舗の契約に伴う差額保証金・・・・新規店舗の保証金と従前店舗の返還保証金との差額持ち出し分がその対象となります。なお、賃料の前払い金的性格を有する権利金については、前出の評価手法のなかで既に考慮済みであることから計上しません。

 

 ④移転先店舗への周知のため費用・・・・お得意様に対する移転のご挨拶状、周辺地域における新規の店舗出店を周知されるための広告費用となります。

 

 以上より、(1)造作工事に関する補償、(2)設備等更新に係る補償、(3)営業補償、(4)移転補償を踏まえることにより補償額が算定されることになります。

 

 さらに、上記における借家権価格と補償額を加算することにより、明渡立退料の経済価値を算定することができます。しかしそうなると、不動産鑑定の範疇外となる補償額を求めることから、不動産鑑定の周辺業務となる調査報告業務を以って対応せざるを得なくなります。

 

 そもそも明渡立退料の評価は、補償的観点からの手法適用の考え方に優位性があることから、前出の②不随意の立退きがある場合における鑑定評価を採用することになりますが、その手法適用に関して借家権割合法は採用されていません。しかしながら、上記の通り周辺業務としての調査報告業務を踏まえた評価であれば、基準の縛りが緩和されますので、借家権割合法をも適用すべきであります。

 

 したがって、明渡立退料を求めるためのフローチャートとしては、まず②不随意の立退きがある場合における鑑定評価をベースとし、これに借家権割合法による手法適用をも勘案することにより借家権価格を求め、さらに(1)造作工事に関する補償、(2)設備等更新に係る補償、(3)営業補償、(4)移転補償からなる4つの補償額を加算することにより、最終的に明渡立退料を求めることになります。

 

 以上、これらを踏まえた不動産調査報告書が作成できれば、司法及び社会からの理解を頂けるものと考えております。

 

 評価人としての今までの知識と経験が、ご依頼人さまへの最大限のお役立ちになれればと思っております。

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