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使用借権の経済価値を問うに、所有権の経済価値の10%~20%程度とした返しに対し、より論理的でかつ対象不動産の実態を踏まえた検証ができないものか、鑑定評価基準にて評価手法が存しないことから、議論を深める必要があると思います。
そもそも使用借権の評価は、補償的観点からの意味合いが強いものであり、例えば親族間にて無償で土地の貸し借りをしていた際にその関係性が不仲となり、争いが裁判に発展し、その退去に伴う補償が求められるような場合、建物所有権のほか、敷地利用権に対応する補償として使用借権の経済価値を求めることになります。
使用借権とは、当事者の一方が目的不動産を無償で借り受け使用収益をなし、後にこれを返還することを約した権利であります。
まず、使用借権の経済価値の判定にあたり重要な論点としては、上記定義における「無償」という言葉に鍵があると思います。
「無償」で借りるとは、本来払うべき対価があるにも係わらず、これを払わず使用収益が可能な状態になることと解釈できます。
これを土地の賃貸借契約に当てはめると、借主には地代を払う義務が生じますが、使用貸借契約では地代を払う義務は生じません。
この点、建物が建っている敷地について、息子が父親に対価を払わず敷地を利用するということは、その利用に関し払うべき地代を払わず、その使用収益が可能な状態であることを意味しています。
また、別視点から父親所有の土地利用にあたり、父親が払う土地の固定資産税・都市計画税につき、息子には税負担が生ぜず、その使用収益が可能な状態であるとも言えます。
つまり、無償で借りるということは、敷地利用に関し①地代を払わず、かつ②固定資産税等を払わず、その利用ができるということであります。
次に、重要な論点としては、その利用期間が大事になってきます。
この利用期間といっても親族間における貸し借りであり、実際のところ契約を取り交わすことは稀であり、その利用期間につき特段の定めがないことから、この期間をどう判定するかが問題となります。
この点に関し、敷地利用を行うには、建物自体がどのような利用状態にあるのかを把握する必要があり、その判定には建物の経過年数よりも経済的残存耐用年数を踏まえることにより、その敷地をどれだけ利用できるかが客観的に把握できることから、当該期間が何年残存しているかが重要となってきます。
これらを踏まえ、上記期間内で得られるであろう地代又は払うべき税金を現在時点に割り引くことにより、その利用に基づく経済価値(使用借権価格)を把握することができます。
したがって、使用借権の経済価値の判定にあたっては、①地代をベースに建物の経済的残存耐用年数を踏まえた複利現価率を勘案して求める方法、②土地の固定資産税等をベースに当該年数を踏まえた複利現価率を勘案して求める方法が挙げられます。
それでは、①地代をベースとした使用借権の経済価値を具体的に求めてみます。
●対象不動産の土地価格
25,000,000円(更地価格を想定)
●年額地代
400,000円(更地価格の1.6%として想定)
●建物の経済的残存耐用年数
7年
●複利現価率
1/(1+r)ⁿ年 ☞ 1/(1+4.6%)⁷年
r=基本利率(割引率)、n=建物の経済的残存耐用年数
●基本利率(r)
国土交通省が地価公示データとして開示している鑑定評価書内の収益価格を求める際の基本利率が参考となります。なお、対象不動産に隣接する地価公示地点の基本利率を4.6%と想定します。
●年額地代の割引現在価値(使用借権の経済価値)
●使用借権割合
2,348,000円 ÷ 25,000,000円 ≒ 9.4%
以上より、①地代を払わず土地の使用収益が可能となる点を踏まえ、無償で土地を借りる使用借権の経済価値及びその割合を判定することができます。
また、上記算出根拠を踏まえ、②土地の固定資産税等をベースとした方法にも当てはめを行うことにより、使用借権の経済価値を判定することができます。
但し、対象不動産が住宅として利用されている場合、固定資産税等には小規模宅地の減税措置が施されていることから、①地代をベースとした方法と比較して低い使用借権割合が試算されることになります。
現状、使用借権の経済価値の判定にあたっては、その事情に応じた画一的基準による価値尺度が存在し、それを対象不動産に当てはめることで当該価値の判定がなされています。
しかしながら、これら基準では画一的であり、対象不動産の個別的事情を踏まえていないことから、上記①②の考え方によるアプローチをなすことにより店舗、事務所ビル及び倉庫といった様々な物件に対しても、その実態を捉えた使用借権の経済価値の判定が可能になるものと思料されます。
担当:小林
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